教皇フランシスコは、ロシアによるウクライナ侵攻を終わらせるための交渉を呼びかけ、両国に対して、「白旗を掲げて交渉する勇気」を持つよう促した。「白旗」は通常、降伏を示す際に使われる。
スイスのイタリア語放送局のインタビューに応じた教皇は、ウクライナ国内には白旗を揚げて降伏すべきという声もあるが、もしそうしたら、強者による行為の是認に当たらないかと聞かれた。
教皇はこれに対して、「そういう考え方もあるでしょう。最も強いのは、状況を見極めて、国民のことを考え、白旗を掲げて交渉する勇気のある人だと私は思います」と答えた。
インタビューは2月2日に行われたが、3月20日にその全体が放送される前に、3月9日、一部の内容が公表された。
イタリアの各メディアはすぐさま、9日に公表された内容について記事を流し始めたが、教皇が「ウクライナは白旗を揚げる勇気を持つべきだ」と語った、と誤って報じていた。
教皇庁広報局のマッテオ・ブルーニ局長は3月9日、記者団にこう説明した。「白旗」という表現は質問したインタビュアーによるもので、教皇がそれを使って「示そうとしたのは、敵対行為をやめること、交渉する勇気で達成される停戦でした。教皇が願っているのは、公正で持続的な平和のための外交的な解決なのです」
交渉は降伏ではなく国を救うための勇気
ブルーニ局長はさらに、インタビューの中で教皇フランシスコがイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘に触れた際の発言も引用して、「戦争のあらゆる状況に言及し、教皇ははっきりと強調しています。『交渉は降伏ではない』」とも述べた。
教皇フランシスコはウクライナ侵攻について語った中で、「交渉するというのは勇気ある言葉です」と強調し、国際社会の支援を得て交渉することは可能だと指摘した。例えば、トルコが交渉に名乗りを上げているとも述べた。
「自分が負けていて、事がうまく運ばないと分かったときには、交渉する勇気を持たねばなりません」と教皇は続ける。「恥ずかしいかもしれませんが、いったい何人が死ねば終わるのでしょうか。間に合ううちに、仲介役を引き受けてくれる国を探すのです」
「事態がさらに悪くなる前に、交渉することを恥じないでください」と教皇は呼びかける。
インタビューの中で、ウクライナ侵攻について自身で仲介役を担う準備はあるかと聞かれた教皇は、「私はここにいます」と答えた。
「交渉は決して降伏ではありません」と教皇は強調する。「国を自滅に追い込まないための勇気です」
ウクライナのアンドリー・ユラシュ駐バチカン大使は、教皇の発言が公表された後、X(旧ツイッター)への投稿で、ウクライナ侵攻は第3次世界大戦だとして、誰がヒトラーに対して白旗を揚げることを考えただろうかと問いかけ、反発した。
バチカンは繰り返し、ウクライナとロシアの間で仲介役を担う意志を示してきた。教皇フランシスコは昨年、ウクライナへの平和特使として、イタリア司教協議会会長のマッテオ・ズッピ枢機卿をキーウとモスクワ、ワシントンと北京に派遣し、各国指導者と面会し、ウクライナでの和平交渉の実現を模索させていた。
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