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今週の記事1本

こちらでは、カトリック新聞に掲載されている記事を、毎号につき1本お読みいただけます。



「死刑の存在理由」とは
社会学者 宮台真司さん講演
東京・千代田区



 「死刑を止めよう」宗教者ネットワークが主催する第28回死刑廃止セミナーが10月24日、社会学者の宮台真司さん(首都大学東京教授)を招いて、「死刑の存在理由。廃止するべき理由。廃止するための条件。」と題してイエズス会岐部ホール(東京・千代田区)で行われ、東京教区の信徒ら約60人が参加した。
  『終わりなき日常を生きろ―オウム完全克服マニュアル』などの著書でも知られる社会学者の宮台さんは、10年ほど前にカトリックに入信したと話す。
  「スクート会(淳心会)の松原教会で、旧約聖書の勉強会に長らく出席しており、当時の主任司祭に『受洗しないか』と言われたのがきっかけでした」
  一人の社会学者として死刑に関心を持ち続け、自らはっきりと「死刑反対論者」と意思を表明する宮台さんは、死刑問題を「法制史、法社会学、法人類学、宗教学をも総動員して熟考すべき問題」と訴える。
  宮台さんは、「日本人の約80%が死刑存置論者」である現状を受け、欧州では、死刑存置論者が過半数であっても、死刑を廃止すると、死刑廃止論者が大半になった事例を紹介。
  存置論者の多くが主張する「重罰による犯罪の抑止」には、軽犯罪と性犯罪を除いては、国連による調査でもその根拠が存在しておらず、死刑が廃止された後も、殺人、放火、強盗などの類の凶悪犯罪がまったく増えなかったという欧州の事例を挙げる。

 「感情の回復」のためにある日本の死刑

 日本で死刑制度が存置されているのは、遺族たち、あるいは凶悪事件のニュースを知った事件と関係ない市民の「感情の回復」のためであると宮台さんは分析する。「やられたら嫌な気持ちがし、不愉快になる。あるいは許せないという感情になる」ので、この陰鬱(いんうつ)な気分を晴らしてスッキリしたいという力学が生じる。「感情を回復」させるために、「やられたら、やり返す」という心理状況になり、「殺されたら、殺し返す」ということが、人類史の中で太古から連綿と行われてきており、死刑存置国家というのは、その太古からの社会の仕組みが一度も変わっていない国のことを指すという。
  死刑が凶悪犯罪の抑止にならない以上、死刑制度が「感情を回復する」ために存在するのならば、「死刑でない他の方法」で「感情的回復」がなされさえすれば、死刑は必要ないということになると宮台さんは主張する。

 再び台頭する応報論

 さらに、「なぜ刑罰が必要なのか」ということを現代人が問う必要があると語る。
  「刑罰の目的は、復讐(ふくしゅう)感情を満たすためである」「刑罰は、仕返しである」という考え方を応報説(応報刑論)と呼び、もう一つの考え方、「社会全体の厚生のために凶悪犯罪を犯した人間は社会から隔離すべきで、もしもその人間がもう罪を犯さないような人間に更生したのであれば社会に戻さなければならない」という考え方を帰結説(教育刑論)と呼んできた学説を説明。
  「両者にはそれぞれ弱点があるのですが、文明が進むにつれて理性が発達して、応報説よりも帰結説の考えが支持されてきたのですが、ここ数十年は逆行して、応報説が台頭してきています。『人間は理性的ではない』ということを、実験心理学が証明している通りです」
  宮台さんは「死刑と戦争は構造が似ており、条件付きで国家による殺人を認める営為である」と話す。戦争や死刑の問題を語るときに、現代でもしばしば引用されるカントの『永遠平和のために』や、死刑を題材とした映画『休暇』(西島秀俊主演)、現在公開中で、大杉漣(れん)が牧師を演じた遺作の映画『教誨師(きょうかいし)』から、私たちは何かを感じる必要があると話を結んだ。

 



法制史を概観しながら死刑廃止の根拠を語る宮台さん

 

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