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今週の記事1本

こちらでは、カトリック新聞に掲載されている記事を、毎号につき1本お読みいただけます。



 
「マスクと祈りが命綱」
南米で日系人医師がコロナチーム指揮
 

  新型コロナウイルスの感染拡大で、南米ブラジルでは毎日千人以上が死亡している。ブラジル南部、リオグランデドスール州唯一の重症患者受け入れ病院で、森口エミリオ秀幸医師(61/2月9日付紹介)は、コロナチームの陣頭指揮を取り、日々奮闘を続けている。「マスクと祈りが命綱」と語る森口医師に、テレビ電話で取材した。

 森口医師が内科部長を務めるリオグランデドスール連邦大学医学部付属病院(以下・大学病院)は、政府が指定した南部のコロナ対策本部で、州内最大の施設を誇りコロナ重症患者指定病院となっている。リオグランデドスール州は日本の国土とほぼ同じ広さ。州内からは人工呼吸器や透析が必要な重症の感染者が、ドクターヘリや飛行機で運ばれてくる。
  森口医師が陣頭指揮を取るコロナチームは3月初めから4カ月間で570人以上の患者の治療に当たってきた。その内の7割が無事に退院できたが、残念ながら3割は死亡。ブラジル全土の感染者数は108万人を超え、死者は5万人に上る。マスクをする生活習慣・文化がないことが感染拡大の原因だと森口医師は考えているが、リオグランデドスール州では州知事が3月時点でロックダウン(都市封鎖)を決めたため、感染者数は他の州の十分の一に抑えられているという。
  それでも、医療スタッフの確保と医療品不足は深刻な問題だ。コロナチームでは、同大学医学部教員、医師、研修医の計5人と交代要員5人で1グループを結成。現在は4グループが、ICU(集中治療室)で50人の入院患者の治療にあたっている。病床数は間もなく70床に、7月中旬までには90床に増やす予定だ。
  一方、850床を持つ同大学病院では、一般病棟を担当する医師らがコロナチームに回されるため、人数が減り、こちらも多忙を極めている状況だ。
  森口医師はこう話す。
  「コロナチームのメンバーは、任命制ではなく、ボランティア(志願)制です。悲しいことにコロナに感染して医師1人、看護師2人が亡くなりました。最近、医療スタッフを襲っているのは、コロナに感染するかもしれないという“恐れ”です。でも『怖いから病棟に行かない』と言っていられない。私たち医療従事者にしかできないことだから、頑張るしかありません」

 患者にスマホを用意

 そうした現状で、森口医師が一番心配しているのは、医療スタッフの心と体の健康だ。コロナチームはそれぞれ1日20時間働いていて、疲労を極めているため、一人一人の体調の変化については、正直に森口医師に伝えることを約束事にしている。「疲れ切ってしまって何も考えられない」などという声が上がれば、すぐに休ませて、交代要員を現場に立たせている。
  「治療にベストを尽くしますが、新型コロナウイルスはワクチンも治療薬もないので、できることは限られてしまいます。その中で大事にしなくてはならないのは、患者さんの心のケアと、医療スタッフの心のケアだと、気付いたのです」
  コロナ病棟は立ち入り禁止で、家族も面会ができないため、最期の別れもできないまま死を迎える患者が少なくない。そこで森口医師は、コロナ病棟に専用のスマホを導入した。患者が「家族と話したい」と望めば、専用スマホで家族に連絡が取れるようになった。病床で交わした言葉が、最後の会話になったという家族もいる。また家族の要望で、患者が人工呼吸器につながれている様子をスマホのカメラで撮って送り、家族に状況を知らせることもしている。

 医療用マスクガウン等が不足

 そのほか、医療品の不足も深刻な悩みの一つ。マスク、医療用ガウン、除菌シートなどの医療品が不足しているため、マスクは洗浄消毒しながら2週間は使っているのが実情だ。最近、日本からマスクが届いたときは、医療スタッフ一同大喜びをしたという。また除菌シートがないため、ビニールの中に箱ティッシュをそのまま入れ、ティッシュに消毒液をかけて使っている。
  日々、森口医師は院内感染を予防するための環境整備とコロナチームの養成と配置などに尽力する。患者や患者家族、医療スタッフの心のケア等にも、睡眠時間を削りながら奮闘している森口医師を支えているのは、「祈り」だと言う。
  「何をしたらいいのか分からなくなることもありますが、祈るしかないという感じになっています。机に置いてある『カトリックの祈り』の本を、これほど開いたことはありません。患者さんにも、私たち医療者のために祈ってほしいと頼んでいます。医者として睡眠が足りていないのですが、今の私のエネルギーの源は祈りです」
  南半球のブラジルは冬に入った。これから7月、8月にコロナ感染のピークを迎え、米国の感染者数を超えるのではないかと予測する専門家もいる。新型コロナウイルス感染は全世界に拡大しているが、森口医師は、感染が少し落ち着き始めた国々の信者らに対して「少し心の余裕ができたら、どうかブラジルの医療者のために祈ってください。私たちにとって、マスクと祈りが命綱なのです」と話していた。
  日本カトリック医師会(篠崎文彦会長)は、森口医師のコロナチーム支援のために海外医療援助基金の口座を公開して協力を求めている。
  ゆうちょ銀行払込取扱票の場合=口座記号00120―4/口座番号70656(右詰め)/加入者名 日本カトリック医師会(海外医療援助)
  インターネットバンキングおよび各銀行窓口の場合=銀行名 ゆうちょ銀行/金融コード9900/店番019/店名(カナ)〇一九(ゼロイチキユウ)/種目:当座/口座番号0070656/カナ氏名:ニホンカトリツク■イシカイ(カイガイ■イリヨウエンジヨ)/※■は空白、カナは全て大文字

 

 

 



ブラジルの大学病院コロナチーム。前列左から2番目が森口エミリオ秀幸医師

 

 

 

 

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