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今週の記事1本

こちらでは、カトリック新聞に掲載されている記事を、毎号につき1本お読みいただけます。



主に倣う共同体を育てる
山元眞(まこと)神父(福岡教区)に聞く


福岡県の小郡(おごおり)教会と佐賀県の鳥栖(とす)教会の主任司祭を兼任して4年になる山元眞神父(福岡教区)は、少子高齢化が進む地方の教会ならではの宣教・司牧に取り組んでいる。大切にしていることは、イエス・キリストが伝えた福音の生き方に倣う「共同体を育てること」を「司牧」の中心に置いていること、そして「結婚講座(結婚準備セミナー)」を「福音を伝える場」としていることだ。宣教・司牧現場の一つ、鳥栖教会を訪ねた。

 鳥栖教会の信徒会館に入ってすぐ目に飛び込んでくるのは、2カ月前にできたばかりの「子ども平和文庫」。長年、山元神父が集めた絵本や児童書、キリスト教書籍など約600冊の中から「平和」に関するものを整理し、保護者が“ミニ図書室”に仕上げたものだ。
  マザー・テレサや、ウルグアイの世界で一番貧しいムヒカ元大統領などを題材にした児童書、戦争体験を描いた絵本などが置いてあり、自由に読むことができる。また2週間ほど借りることもできるのだ。
  この「平和文庫」は、今年1月の教皇フランシスコの「平和メッセージ」を受けて、山元神父が「平和のために具体的に動こう」と思いついたものだが、次のような深い思いも込められている。
  「子どもたちに教会の教義をただ説明し、丸暗記させるのではなく、『キリストが伝えた福音の精神』を生きる人になってほしいと、思っているのです。だからキリストのように生きた人々の本を紹介し、キリストが望んでいることは何なのかを自分で感じ、考える機会にしてほしいと思います」
 8月の「カトリック平和旬間」には、子どもたちの感想文等を聖堂に掲示する計画だ。

 考える力を育てる

 山元神父はこれまで隣接の幼稚園教諭が行ってきた学年別「教会学校」を、スタッフ(保護者)が主導で行う「子ども会」へと改編した。年齢の異なる子どもたちが一堂に会して、スタッフと一緒に毎月2回、マザー・テレサなどの短いDVDを見たり、神父らの体験談を聞いたりして、「キリストの精神」を学ぶ。
  また「子ども会」の内容はその日のミサ典礼のテーマに沿ったものを心掛けている。今年1月28日の「世界こども助け合いの日」には、子どもたちは、事前に南スーダンの子どもたちの飢餓状況の映像を見て話を聞き、ミサではそれぞれの「お年玉」を献金して、「愛の実行には痛みが伴う」ことを体験した。
  自分で「気付き・考える」信者を育てる必要性を感じた背景には、山元神父自身の苦い体験がある。30年以上前、ローマに留学していた時、イタリア人司祭から日本の首相について意見を求められたことがある。山元神父には自分の意見がなかったので「どうでもいい問題だ」と答えた。するとその司祭は「お前はばかか」と真顔で驚いたという。
  その時初めて、今までの自分が、教義をただ覚え、長上の考えに絶対服従して“思考停止状態”に陥っていたこと。キリストの教えの本質を理解していなかったこと。またそうした視点で物事を見てこなかったことに気付かされたのだという。

 結婚講座は福音を伝える場

 今、山元神父は人々に「キリストの精神」を伝える福音宣教の場として、「結婚講座」を大事にしている。司牧の現場と同じく、教義よりもまずは「今、目の前にいる人にとって必要なことは何か」を見極めることだ。そして「キリストの精神」を生きた人々の本や映像を教材にしてキリストの教えの本質、福音を伝え、語り合うひとときを持つ。
  効率主義や成果主義、経済至上主義など世間の価値観に影響を受けている人たちは、神父から「ありのままの自分でいい」と教えられ、次第に自分のこれまでの考え方や生き方を見直すようになる。そして講座を受けている最中にキリスト教に関心を持ち、「洗礼を受けたい」と望む者が出てくるのだという。
  一方、“律法主義的な教会”に距離感を覚えている信者にとっては、自身の信仰を刷新する機会として役立っている。そして結婚後は、子どもたちの洗礼も望むようになり、また結婚講座で知り合った人々が、仲間の輪を広げていく。
  教会では教義に基づいた“理想の家庭像”を“良し”とし、そこから外れる人たちを排除する風潮がある。しかし山元神父はこう話す。
  「離婚している人、同棲している人、結婚前に子どもができた人、また信者でない人など、いろいろな人たちが入ってこそ教会なのです。教会は、組織でも建物でもありません。教会は全ての人に開かれた共同体なのだということを忘れないでいたいのです」

 




「子ども平和文庫」を作った「子ども会」スタッフと山元神父(左)。
「できれば年間を通じて全部読んでもらいたいですね」




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