教皇フランシスコは5月4日、バチカンを訪問した日本の岸田文雄首相と会談し、核兵器とそれが世界に与える脅威に対して強い反対の姿勢を示した。バチカンが明らかにした。
教皇庁広報局のマッテオ・ブルーニ局長によると、教皇と岸田首相の25分間の会談では、「核兵器について意見交換があり、その使用と保有は考えられない」ことで一致したという。
教皇庁広報局が会談後に発表した声明によると、両指導者は「ウクライナでの戦争」について話し合い、「対話と平和の緊急性を強調しつつ、そのために、核兵器のない世界の実現への期待を表明した」。
複数のメディアの報道によると、会談があった5月4日、ロシア政府は岸田首相を含む日本人63人に無期限でロシアへの入国を禁止する制裁を発表し、同国に対する「容認し難い発言」があったと批判した。
2月24日にウクライナ侵攻を始めて以来、ロシアの指導者たちは、西側諸国がウクライナへの武器供与を続けるなら、核兵器を使用する可能性もあると主張してきた。
4月にロシア国営テレビのインタビューに応じた同国のセルゲイ・ラブロフ外相は、NATO(ナトー)(北大西洋条約機構)が、ウクライナ侵攻をロシアとの代理戦争にしていると非難し、核戦争の脅威を見くびるべきではないと語った。
最近では、体制の宣伝ばかり流すことで知られるロシアのニュースチャンネル「ロシア1」が、英国とアイルランドへの核攻撃のシミュレーションを放映し、怒りを買った、と5月3日、米国の「ワシントン・ポスト」が報じている。
人類の絶滅か戦争の放棄か
教皇フランシスコは、4月17日のローマと全世界に向けた「復活祭メッセージ」で、ウクライナ侵攻をきっかけに持ち上がってきた核兵器による脅威に対して明敏な警告を発していた。
世界の指導者に平和実現への尽力を求めた教皇は、1955年に英国の哲学者バートランド・ラッセルとドイツ生まれの理論物理学者アルバート・アインシュタインが核兵器による危険を警告する宣言文を引用した。
「各国の指導者たちが、人々の平和への願いに耳を傾けてくれますように」と教皇は願う。「約70年前に科学者たちは穏やかでない問いかけをしました。『わたしたちは人類に絶滅をもたらすか、それとも人類が戦争を放棄するか』。この問いかけに、指導者たちが耳を傾けてくれますように」
5月4日、バチカンを訪問した岸田文雄首相と握手を交わす教皇フランシスコ(CNS)
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