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今週の記事1本

こちらでは、カトリック新聞に掲載されている記事を、毎号につき1本お読みいただけます。



2019年 新受洗者シリーズ(2)
全て神様に向かう 一本道だった
東京・麹町教会 
幸田 賢吾(こうだけんご)さん



 洗礼を受けた新しい仲間(新受洗者)たちを紹介するシリーズ。2回目は、刑務所で「神様は生きている」という言葉に触れたことをきっかけに、少しずつキリスト教に関心を深めていった幸田賢吾(こうだけんご)さん(49)。みことばに触れながら、元受刑者の仲間と共に社会復帰を目指す今、幸田さんは、感じてきた孤独や、犯してきた罪、受けた裏切りも含め、人生の全てがキリストに向かう一本道だったと確信している。
  2018年7月、幸田さんは逮捕時に着ていた作業服を2年ぶりに身に着けて刑務所の門を出た。その足で向かったのが、身元引受人の五十嵐弘志さんが理事長を務める、受刑者・元受刑者の社会復帰支援施設のNPO法人マザーハウス(東京都江東区)だ。
  現在、マザーハウスで働く幸田さんは、その一室の天井と壁を指さしながらこう語る。
  「この部屋、出てきた日に塗ったんですよ。たまたまペンキを塗る日だったわけですけど、驚きましたね。頼まれてすぐに塗れたのは、中学を出た後ペンキ屋に住み込みで働いたり、刑務所でペンキ塗りの職業訓練を受けたりしていたからですよ。おまけに自分はちょうど作業服姿でしたし」
  全てが神の導きだと思う。「自分の人生ずっと曲がり道でしたが、キリストにたどり着くための一本道だったんですね」

 「神は生きている」

 幼い頃に両親が離婚。母親が夜、仕事に出ていくと寂しくなり、一人泣きながら近所を歩き回ったのを覚えている。
  4歳で父親や姉と暮らすことを選ぶが、父親は小学生になった幸田さんを“しつけ”する際、冬でも屋外に立たせたり、ロープでしばってベランダにつるしたりした。「虐待ですね。苦しみから逃げたくて、死にたいと思っていました」
  盗んだ金で菓子を買い、同級生の気を引くような「悪さ」を続け、13歳で教護院(現・児童自立支援施設)、中学卒業後に少年院へ。出所後に交際し始めた少女と18歳で入籍、娘も生まれるが、暴力団員として行動するようになっていった。
  刑務所に初めて入ったのは20歳の時だ。2年の服役中に離婚、その後も覚せい剤使用等での逮捕・入所を繰り返すが、そうした中で幸田さんは神様に出会っていく。
  32歳だった4度目の服役中のこと。別れた妻が差し入れてくれた、元住吉会(暴力団)幹部で現在は宣教師の中島哲夫さんの著書『悪(あく)タレ極道 いのちやりなおし』を読み、「神は生きている」という一言に衝撃を受けた。
  当時、幸田さんの知る“神”は、父親の再婚相手の根回しで自分も入会した創価学会の「ご本尊様」。“紙に印刷された神”に違和感があったが、「神が生きているのなら、すがれる」と思えたのだ。刑務所で同室だったナイジェリア人男性に以前聖書を見せてもらった時は内容がよく分からなかったが、『悪タレ極道』の本は聖書のように繰り返し読んだ。
  神様を思う時に「温かさ」を感じるようにもなり、5度目の刑期を終えた後は、外での生活が4年以上になった。ところが、幼い頃から心に掛け、出所中に関わり続けてきた当時17歳になっていた少女から「裏切られ、ひどい目に」遭い、刑務所へ戻ることになる。
  「どん底」の中で、過去の関係も全て断ち、生き直すことを決意。「キリスト教と関わりのある」マザーハウスを知ったのもそんな時で、マザーハウスを介して自ら望んだ「みことばを伝えてくれる人との文通」が実現する。出所してマザーハウスの仲間と暮らし、麹町教会で聖書を学ぶ中、「自分のためにこの世に来てくれたイエス」を意識するようになっていった。
  そして今年の正月、自分の人生を振り返る作業をした時、自分が「ずっと孤独だった」ことに初めて気付いたという。十数年にわたる刑務所での日々も、犯した罪も「孤独な自分から逃げた」結果だった。
  しかし、もう逃げる必要はない。「この世界は神様の思いの中にあって、自分の髪の毛一本一本まで神様に数えられていると思うから、それだけで十分。信仰的なことはよく分かりませんが、自分の中にキリストがいますから。自分は、ただこうしているだけ」
  そう言って幸田さんは、両腕を広げて天を仰ぐしぐさをして見せた。
  4月20日、麹町教会の復活徹夜祭で洗礼を受けた幸田さんは、その時にかすかに感じたという「今までと何か違う意識の芽生え」を胸に、これからもキリストとの一本道を歩いていく。

 

 



幸田賢吾さん。昨年夏、出所してきてすぐに天井や壁のペンキ塗りを任された、
マザーハウスの一室で

 

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