教皇フランシスコは9月22日と23日、南仏マルセイユを訪問した。22日にはマルセイユ市街と地中海を見下ろす海難事故犠牲者の記念碑の前で祈り、危険を冒して海を渡る移住者を救うのは「義務」だと訴えた。23日には訪問の主目的だった「地中海会議」の閉会で演説し、真の悪は思いやりの崩壊だと指摘、移住者に港を閉ざす欧州諸国を批判した。同日のミサでは、全カトリック信者に「信仰と愛と希望」のうちに飛躍するよう促した。(2面にも記事)
●マルセイユ訪問 1日目
海難犠牲者の記念碑前で
移住者を救うのが「義務」
【マルセイユ(フランス南部)9月22日CNS】
教皇フランシスコは9月22日、訪問したフランス南部の港湾都市マルセイユの市街と地中海を見下ろす丘の上で、諸宗教指導者や船員支援団体代表らと共に省察の集いを持った。教皇は青くても危険な海で命を落とした数知れない人々のために、参加者を沈黙の祈りの時に導く。
教皇フランシスコは集いでの言葉で、世界は今、岐路に立っていると警鐘を鳴らす。人々は共感と出会いときょうだい愛への道のりか、無関心と紛争に向かう道へ足を踏み外していくかのどちらかを選ばなければならない。
教皇は訴える。「海上に投げ出されて溺れそうになっている人々を助けなければいけません。それは人類の義務であり、文明社会の義務です」
マルセイユのブノワ・パヤン市長や諸宗教共同体の代表、教会関係者、移住者の救助や世話と支援に当たる援助団体の関係者ら数十人が教皇と省察の集いを共にした。
教皇フランシスコは参加者たちと共に祈り、沈黙の時に導いた後、船員や移住者など海で亡くなった人たちを追悼する記念碑の前に向かった。記念碑の上部にある十字架にはみ心といかりもあしらわれていて、教皇と参加者たちが共に祈るうちに、太陽はゆっくりと海に沈んでいった。
「海難事故をニュース記事として受け止めてしまうことに慣れないでください」と教皇は呼びかける。報道では、亡くなった人たちの顔は分からず、名もない数字にされてしまうからだ。その兄弟姉妹たちは、「恐怖のうちに溺れ死に、その心に抱いていた希望もついえてしまったのです」。
「私たちに求められているのは、言葉ではなくて実際の行いです」と強調した後、教皇は参加者たちを、亡くなった人たちを悼む沈黙の時に導いた。
「その人たちが遭遇した悲劇に深く思いを向けましょう」と教皇は呼びかける。
救援活動の妨害は「憎しみの行い」
歴史の中の今この時、きょうだい愛への道を歩むことで人類共同体は豊かに成長できるが、無関心を決め込む姿勢は「地中海を血で染めてしまいます」と教皇は訴える。
「人間が取引材料にされたり、残酷なやり方で収監されたり、拷問されたりするのを見て、諦めてしまうことはできません」と教皇は強調し、多発する海難事故の原因は「非情な人身取引と常軌を逸した無関心」にあると非難する。
教皇フランシスコは指摘する。宗教指導者こそが人々に道を示して、「人の心をむしばむ過激主義や共同体のあるべき姿を損なう原理主義の病的な観念」を退け、「互いに友愛の心で受け入れ合う」姿勢で模範とならなければならない。
教皇は海上で危険にさらされている移住者の救助や支援に当たる人々を称賛する。それと同時に、救援を妨害しようとする動きもあることを承知しているとも語った。そのような行動は、「バランス」を隠れみのにした「きょうだいに対する憎しみの行いです」。
何カ国かの政府は、非政府組織(NGO)による救援活動を妨害してきた。その理由は、非正規な手段による渡航を助長するからだとしている。
教皇フランシスコは、「私たちは希望をくじかせることのないようにしましょう。共に希望のモザイクを作っていきましょう」と呼びかけた後、船員や移住者の支援に携わる人たちが読み上げる祈りの意向に耳を傾けた。
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